ウールの持っているボリューム感と腰のあると言われる典型的な生地を今回はご紹介させて頂きます。
タイトルに出ておりますドブクロスとは30年位前まで使われていた昔の低速織機の事で
ウール本来の風合いを損なわずに織り上げる事が出来てスーツに仕上げた時も非常に風格のある仕立栄えになります。
今となってはこの低速織機は世界にも殆ど存在せず織り上げられる生地は往年の名品と言えるでしょう。
テーラーラトとしましては主に過去に生産されていた
素晴らしい生地の存在を知って頂きたいと思い掲載させて頂きました。
以下は仕入れ元による文言のご紹介になります。
”英国が誇る老舗ブランドのジョンクーパーが、創出するドブクロス生地。
その風合いは大変柔らかく、類まれなる気品を持ち合わせています。
(ドブクロス)とは服地を織る機械のことですが、本来は産業革命当時の英国織物産業の中心地であった村の名前です。
そのドブクロス村で発明された機械なのでDOBCROSS LOOM(ドブクロス織機)と呼ばれるようになりました。
そして、その機械で織られた生地がドブクロス生地になります。
この機械は1800年代後半~1960年辺りまで生産されてきましたが、
大戦後の技術革新により、より高速な織機に取って代わられていきました。
現在の(レピア式織機)や(エアジェット式織機)は緯糸を高速に通すのが特徴で
特にエアジェット式では一分間に600回通す事が可能になりました。
この高速で緯糸を通す作業は、織機の稼働使用そのものを変えました。
高速で織機を動かすため、特に経糸をコントロールする綜絖(そうこう)という箇所の稼働域が小さくなって行きました。
従来上下に開いていた綜絖が上にしか開かなくなったのです。
その結果緯糸のテンションが強くかかり、緯糸をはさむ経糸も上から押さえつけるようになった為、
ウールが持つ柔らかな自然な風合いが殺されていったのです。
対してドブクロス織機は従来通り木製のシャトルでたて緯糸を通し、そのスピードは一分間に約100回。
一日に約40mしか織る事が出来ません。
しかし、この熟練職人が木製シャトルを使い、ゆとりを持って丁寧に織り込んだドブクロス生地が持つ、
本来の優しい風合いは生産性のみを追及した現在の織機では到底真似る事は出来ません。
今ではハダースフィールドのDobcrossWeavingCompanyのみが14台しか残っていないドブクロス織機を使って生産されております。”
暑い最中ではございますが皆様如何お過ごしでしょうか、
今回は表地の素材だけではなく中身に使われる芯素材までリネンを使用しましたスーツをご紹介させて頂きます。
通常のウール系を表地に使用しました服は主に馬の毛やフェルトを複数重ねた毛芯と肩パット等を使用し
比較的体の熱を逃がしにくい構造になっていますが
これを全てリネンを使用する事により放熱性が増し夏を快適にお召し頂けるようお仕立てさせて頂きました。
今回のお客様は数着目のご注文でしたので以前の型紙からリネン素材に合わせた変更もさせて頂いております、
例えば肩パットが入らないので肩部分の調整等、デザインも季節感のある黒蝶貝のボタンを使用しました。
またリネン素材は伸縮性がウールに比べて少なくタイトになるほど窮屈感が出易いので
各部のユトリ具合もお客様とのご相談の上調整させて頂きました。
堅牢な縫製の上で水洗いも可能にしておりますので汗や匂いを落とし易く出来ており
暑い夏にご活用して頂ければ幸いでございます。
今回はスペアパンツ付きの3Pスーツをご注文頂きました。
使用しましたスーツ地はモヘア混紡の2PLY(2双糸)で盛夏を除いた春から秋にかけて向いております。
発色もやや濃い目のインクブルーで華やかさとビジネスに向いた落ち着き感も持ち合わせています。
スタイルのご希望はなるべく無駄の無いスマートな感じでご体型が恰幅の良い方でしたので
ウエストのやや上目をシェイプし目線を上に持って来るように操作致しました。
また上着を着用しない時のベストの丈もご体格に合わせて長すぎずバランスを取らせて頂いております。
そしてご着用の主な目的はお仕事なのでお立会いになる方に好感を持って頂ける事が大切でしょう、
主にテーラーの作るビジネススーツはファッション性よりも着る方のセンスや仕事への熱意が形になって
信頼感等を得る事が重要な気がします、仕事の道具の一つとも言えるでしょうか。
また長時間リラックスしてご着用頂ける着心地も大切なので
必要な箇所にユトリを持たせております。
肩周りや腕の上げ下げ、座った時の胴回りや膝のユトリ具合、
パンツの股上の履き心地等多岐に渡り勘案させて頂きました。
特にご体格の大きな方はこの辺りが細身の方とは大きく違ってきますね、
出来上がり後もご使用になられて調整が必要であればさせて頂く場合もございます。