今回は遠目では無地に見えますが近くで見ると
約5ミリ巾のピンストライプの夏らしい軽目の柄をお選びになられました。
スーツのシルエットはトラディショナルなビジネス向きで
ユトリ具合もタイト過ぎずお好みに合わせて中庸的にさせて頂きました。
3着目のご注文のお客様なりますが
ご体型を横から見ると腰から下が前に出ているような骨格で
私共はこれを送り腰と呼んでおります。
この場合は標準体型の服を着て頂きますと
上着の前丈が上がって裾が開き気味になり脇辺りにも皺が出てきます。
そしてこれらの体型をカバーする為に仮縫いや型紙の補正にも反映して行きます。
また当店ではこのような作業を落ち着かせるとも呼んでおりますが
自然に合って無いスーツはどこか落ち着かない印象も受けますね。
自然体なスーツは自身を持ってお仕事にも取り組んで頂ける事でしょう、
長年ご愛用頂ければ幸いでございます。
今回の仮縫をさせて頂きましたお客様は2着目ご注文のスーツでしたが
素材がウールからリネンに変わりましたのでそれに対応した調整をさせて頂きました。
厚みにもよりますがリネンはウールに比べて相対的に伸縮性が少なく同じ寸法でもタイト目になりやすい傾向があります。
前から見た画像1枚目のスタイルは通常のウール系と変わりありませんが
人の動きに影響され易い後ろ側にユトリを少し増やしました(画像2枚目)。
スタイル的にも大きく崩れ難いようにこの塩梅は当店の経験によるものです、
機械では出来ない人の手にのみに出来る職人技とも言えるのではないでしょうか。
またこのリネンスーツの特徴は芯地や裏地の大部分を同じリネン素材を使いまして
ご家庭でも水洗いをして頂ける作りになっております。
構造的にもシンプルな上に堅牢な縫製なのでアイロン等お手入れもし易く暑い夏にはメリットの大きい服装でしょう、
副素材も含めた作りのリネンはウールほど重ね着をしても暑さを感じ難いのも特徴です。
モヘア30%混紡の2双糸で織り上げた肉厚のあるスーツ地ですが
やや暑い時にでもサラッとした風合いがあるので快適にお召し頂けます。
お仕立を頂いたのは中肉中背の方ですが
一部元のご体型を隠してバランスの取れた仕上がりを目指しました。
寸法を測って型紙に反映させた上で骨格の特徴を掴み、
生地の性質や芯地等の副素材との相性を考慮し
仮縫いで全体のバランスを調整して行きます。
これはご注文の度に毎回繰り返す事ですがご体型は一人ずつ違いますので
毎回一から取り組むという作業になります。
ですがこれを積み重ねる事によりある程度先を読めると言いますか
出来具合の想像ができるようになってきます、
やはり経験による積み重ねは大事な所ですね。
その分量産はできませんがテーラーの持ち味として残して行きたいと考えております。